第2期・第2週|歯周病と全身疾患

歯周病と全身疾患の関係 完全版
糖尿病・心疾患・認知症・早産との深いつながり

歯周病は「歯ぐきの病気」ではありません。口の中の炎症が血流に乗って全身をめぐり、糖尿病・心臓病・脳卒中・認知症・早産に関与することが研究で明らかになっています。

世田谷通りリキ歯科・矯正歯科|院長 西山 力|更新日:2025年

歯周病とは何か・どこが怖いのかまず理解する

歯周病とは、歯周病菌による感染症です。歯と歯ぐきの間にある歯周ポケットに細菌が増殖し、歯ぐき・歯を支える骨(歯槽骨)を破壊していきます。

歯周病の最大の特徴は「痛みが出にくい」ことです。痛みを感じたころにはかなり進行しており、歯が動く・抜けるという段階になっていることも珍しくありません。

日本人の約8割が歯周病(予備軍を含む)

厚生労働省の調査では、成人の約8割が歯周病または歯周病予備軍とされています。「自分は歯周病ではない」と思っている方の多くが、実はすでに初期〜中等度の歯周病であるケースが少なくありません。

歯周病の段階 症状 歯槽骨への影響
歯肉炎(初期) 歯ぐきの赤み・腫れ・出血 骨への影響なし(可逆的)
軽度歯周炎 歯ぐきの腫れ・出血・口臭 軽度の骨吸収
中等度歯周炎 歯のぐらつき・膿・強い口臭 明確な骨吸収
重度歯周炎 歯が大きく動く・抜歯が必要なケースも 高度な骨吸収

全身に影響するメカニズムなぜ全身に広がるのか

「口の中の病気がなぜ全身に影響するのか」。その答えは、歯周ポケットの構造にあります。

歯周ポケットの内壁は非常に薄い

歯周ポケットの内壁は薄く傷つきやすい粘膜です。歯磨き・食事・歯ぎしりのたびに微細な傷がつきます。

細菌・毒素が血流に入り込む

傷から歯周病菌・エンドトキシン(細菌の毒素)が血液中に流れ込み、全身をめぐります。

炎症性サイトカインが全身へ

炎症巣で産生されたTNF-α・IL-6・CRPが血流に乗り、全身の慢性炎症状態を引き起こします。

臓器・血管・免疫系に影響

心臓・脳・膵臓・子宮など全身の臓器で炎症・機能障害が引き起こされます。

歯周病と糖尿病:双方向の悪化第6の合併症

歯周病と糖尿病は、現在最も研究が進んでいる「双方向関係」の代表例です。

歯周病 → 糖尿病を悪化させる
  • TNF-αがインスリン抵抗性を高める
  • 血糖コントロールが難しくなる
  • HbA1c(血糖指標)が上昇する
  • 歯周病治療でHbA1cが改善する研究多数
糖尿病 → 歯周病を悪化させる
  • 高血糖で免疫機能が低下する
  • 歯周病菌への抵抗力が落ちる
  • 血管障害で歯ぐきへの栄養・酸素不足
  • 歯周病が重症化・治りにくくなる

「糖尿病の第6の合併症」としての歯周病

糖尿病の合併症としてすでに知られている網膜症・腎症・神経障害・動脈硬化・感染症に加え、歯周病が「第6の合併症」として医療界で認識されるようになっています。糖尿病をお持ちの方は特に定期的な歯周病ケアが重要です。

歯周病と心疾患・脳卒中動脈硬化との関係

歯周病患者は、歯周病でない人と比べて心臓病リスクが約2〜3倍高いという研究結果が報告されています。

メカニズムは以下の通りです。血液中に入り込んだ歯周病菌(特にPorphyromonas gingivalis)が動脈の内壁に付着・定着し、炎症を引き起こします。この炎症が動脈硬化を促進し、血栓形成のリスクを高め、心筋梗塞・脳卒中につながります。

動脈硬化の病変部から歯周病菌が検出

心筋梗塞・脳梗塞で手術した患者の動脈硬化病変部(アテローム)から、歯周病菌のDNAが検出されたという報告があります。口の中の細菌が文字通り「血管の中」で見つかったという事実は、歯周病と心血管疾患の関係の強さを示しています。

歯周病と認知症注目される新たな関係

近年、歯周病と認知症(特にアルツハイマー型)の関係が注目されています。

  • 歯周病菌(Porphyromonas gingivalis)が産生するジンジパインという毒素が、アルツハイマー型認知症の原因物質であるアミロイドβの蓄積を促進するという研究が報告されています
  • 歯の本数が少ない人ほど認知症リスクが高いという疫学データが複数報告されています
  • 噛む動作が減ることで脳への刺激が減少し、認知機能の低下につながるという側面もあります
「歯を守ること」が認知症予防になる

まだ研究段階の部分もありますが、「歯周病を予防して歯を守ること」が認知症リスクの低減につながる可能性が示されています。健康寿命を延ばすためにも、口腔の健康管理は重要です。

歯周病と早産・低体重児妊娠中こそケアを

妊娠中の歯周病は、早産・低体重児出産のリスクを5〜7倍高めるという研究結果があります。

メカニズムとして、歯周病菌の毒素(エンドトキシン)が子宮収縮を促すプロスタグランジンやサイトカインの産生を高めることが一因とされています。

妊娠中の歯科受診がおすすめな理由

妊娠中は女性ホルモンの変動により、歯ぐきが腫れやすく歯周病が悪化しやすい状態になります。安定期(妊娠5〜7ヶ月)は歯科処置に適した時期です。世田谷通りリキ歯科・矯正歯科ではマタニティ歯科(妊婦歯科検診)に対応しています。妊娠中であることを必ず事前にお申し出ください。

歯周病のセルフチェック気になる症状を確認

以下の項目に当てはまるものはありますか?

  • 歯磨きのとき歯ぐきから血が出る
  • 歯ぐきが赤く腫れている・やわらかい感じがする
  • 口臭が気になる・人に指摘されたことがある
  • 歯ぐきが下がって歯が長くなった気がする
  • 歯と歯の間に隙間ができてきた
  • 歯がぐらつく感じがある
  • 食べ物が歯の間によく詰まるようになった
  • 歯ぐきから膿が出ることがある
  • 糖尿病・心臓病の治療中・または家族に多い
  • 妊娠中または妊娠を計画している
1項目でも当てはまる方は早めの受診を

歯周病は痛みが出にくいため、症状が出た段階ではすでに進行していることがほとんどです。1項目でも当てはまる場合は、早めに歯周病の検査を受けることをおすすめします。

今日からできる予防と治療具体的なアクション

1
就寝前の丁寧なブラッシング+フロス
就寝中は唾液の分泌が減り、細菌が繁殖しやすくなります。就寝前に歯ブラシ+デンタルフロスで汚れを除去することが最重要のセルフケアです。

2
3〜4ヶ月に1回のプロクリーニング
セルフケアでは取れないバイオフィルム・歯石を定期的に除去します。歯周ポケットの深さ・歯ぐきの状態を定期的にモニタリングすることで、悪化を早期に防げます。

3
歯周病がある場合は積極的な治療を
すでに歯周病がある場合は、スケーリング・SRP(歯周ポケット内の歯石除去)が必要です。保険適用で受けられます。早期に治療することで骨吸収の進行を止められます。

4
全身疾患がある方は歯科と医科の連携を
糖尿病・心疾患をお持ちの方は、主治医と歯科医師が連携して管理することが重要です。歯周病治療が全身疾患の管理改善につながることがあります。

よくある質問(FAQ)疑問を解消

Q歯周病はなぜ全身疾患と関係するのですか?
A歯周病菌や炎症性物質(サイトカイン)が歯周ポケットの傷から血液に入り込み全身をめぐるためです。心臓・脳・膵臓・子宮など全身の臓器で炎症・機能障害が引き起こされます。

Q歯周病と糖尿病はどのように関係していますか?
A双方向に悪化させ合う関係にあります。歯周病の炎症性サイトカインはインスリン抵抗性を高め血糖コントロールを悪化させます。逆に高血糖状態では免疫機能が低下し歯周病が重症化しやすくなります。歯周病治療でHbA1cが改善するという研究結果が多数あります。

Q歯周病は心臓病・脳卒中のリスクを高めますか?
Aはい、歯周病患者は心臓病リスクが約2〜3倍高いという研究があります。血中に入り込んだ歯周病菌が動脈内壁で炎症を起こし動脈硬化を促進することが原因と考えられています。

Q妊娠中に歯周病があると早産になりやすいですか?
Aはい、妊娠中の歯周病は早産・低体重児出産のリスクを5〜7倍高めるという研究結果があります。妊娠中こそ積極的な口腔ケア・定期検診が重要です。世田谷通りリキ歯科・矯正歯科ではマタニティ歯科に対応しています。

Q歯周病の予防のために何をすればいいですか?
A就寝前のブラッシング+フロスによるセルフケアと、3〜4ヶ月に1回のプロクリーニング(スケーリング・PMTC)の組み合わせが最も効果的です。すでに歯周病がある場合は早めにご相談ください。

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